第10号 1997年7月15日創刊5周年記念号


主な内容
21世紀への提言「宗門人の果たすべき使命」
大本山総持寺副貫首 板 橋 興 宗

 理想的な社会になり、理想的な文化生活ができ、すべて の願いが思い通りに実現できたら、「どんなにか「しあわせ」 になれるだろう。これは万人が望む夢であり、希望である。

 しかし、文化生活が進み、快適で快楽な生活ができたとしても、それだけで「し あわせ」になれるだろうか。福祉が進み、税金が少な く、収入の多い社会が実現したとしても、それだけで 私たちは満足がゆくだろうか。

 願い通りに欲求が満たされれば、それで満足し切れると思うのは、はかない夢であり一種の幻想にすぎない。

 私たちは「明日がわからない」存在である。願いをかければ、かけるほど不安がつきまとう。どれほど死にたくないと思っても必ず死ななければならない。そ の上、死んでから先のことまで考えて、さまざまに思い悩むのが人間の常である。

 昔から「少欲知足」ということが言われる。しかし、少欲であれば「足るを知る」人になれるとは限らない。 「足るを知る」ことと、欲の多い少ないは、むしろ別な次元であると言いたい。

 足るとは何に足りればよいのか。その足るとは「いつ」のことか。ここを問題にする人は少ない。

 これは、古くして新しい問題であり、人間として永遠の課題である。

 禅はまさしくこれに正面から取り組み、しかもまともに答えを出している。宗門人が果たすべき使命は、この解答を身を以って世界に示すことにある。「知足」の原点を直指することが宗門人の根本使命である。世界救済の根源である。

 あらゆる宗教的な運動や社会事業も「知足」が原点になくては、宗門人の本当の宗教活動とは言えないのではなかろうか。


北アメリカ開教75周年・ 両大本山北米別院禅宗寺創立75周年報告
北アメリカ開教・禅宗寺創立75周年事務局
SOTO禅インターナショナル事務局 東京都・長泰寺副住職 大 谷 有 為
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 去る4月の18日から20日まで3日間にわたり、アメリカ・ロサン ゼルスにある両大本山北米別院禅宗寺にて、曹洞宗北7メリカ 開教75周年、ならびに禅宗寺創立75周年の記念式典・法要が厳 修された。この式典には、禅宗寺教団、北アメリカの開教師を 中心とし、約400名もの方々が出席された。

 日本からは、宗務総長・大竹明彦老師、総持寺副貫首・板橋興宗老師、永平寺 監院・南澤道人老師、総持寺監院・江川辰三老師を初めとする 100名を越える諸老師、御尊宿の方々が参集された。また、日 本からの寺族関係者・一般の方々も参加されたツアーの団体は 3つを教えた。さらに、ハワイやブラジルからも、開教師・寺族 を中心とした多くの方々が出席された。

4月18日(第1日目)

曹洞宗北アメリカ開教物故者諷経

 伝道教師会代表・米国・バークレ−禅センター堂頭・ ワイツマン宗純老師の導師のもとに、物故者諷経が厳 修された。この法要中に読経された参同契、そして回 向は共に英語でなされた。

曹洞宗北アメリ力開教師・伝道教師・寺族協議会

 協議会に先立ち、宗務庁教化部長・佐藤良彦老師の 導師のもとに、開講式が行われた。 その後には、禅宗寺パーキングにてバイキング形式 でのランチョン(昼食会)が催され、親睦のひととき がもたれた。

 協議会は、禅宗寺ソーシャル・ホールにて行われ、 北アメリカ開教師・伝道教師、また宗務庁・両本山を 初め多数の宗門僧侶の方が参加された。参加者全員の 自己紹介の後、永平寺監院・南澤道人老師より道元禅 師750回大遠忌事業に対する理解と協力のお願いがさ れた。

 また、開教師・伝道教師からの要望としては、 海外で得度を受けた者が本山の僧堂で坐禅ができない かという意見が出された。これに対して、一定期間を 設けて僧堂を解放することを検討しても良いという答 えがなされたのは、従来の考え方、受けとり方を一歩 も二歩も前進したものと思わせた。

禅宗寺創立75周年記念晩餐会

 晩餐会は、禅宗寺から歩いても10分程の近い距離に あるニューオータニホテルで行われた。約400名もの 方々がボールルームに集まった。開式の辞の後、禅宗 寺教団の理事長・総代の各位より、それぞれ歓迎の挨 拶、来賓の紹介がなされた。

 そして、大竹明彦宗務総長老師をはじめ、多数の祝辞が述べられた。また、S OTO禅インターナショナル会長松永然道老師より、 禅宗寺75周年記念事業の一つである身体障害者参詣道 建設に対する寄付が贈呈された。

4月19日(第2日目)

北アメリカ開教75周年記念〔禅をきく会〕

 第2日目に行われた〔禅をきく会〕は、北アメリカ開 教75周年記念にふさわしく、内容も非常に充実したもの となった。会場の日米劇場は、午後2時の開演時間を 待たずに満席となった。宗務庁教化部長・佐藤良彦老師 の挨拶の後、禅宗寺の日系三世・四世の子供達の〔禅太 鼓〕による太鼓の演奏で、オープニングが飾られた。

 今回の〔禅をきく会〕のメインは放送タレント・永六輔氏に よる講話と総持寺副貫首・板橋興宗老師による禅話である。永 六輔氏は、色即是空について自らの視点でわかりやすく話をされた。また、自身が作詞された『上を向いて歩こう』のエピソードなどについても話をされ、 会場は笑いに包まれた。

 板橋興宗老師は、「なぜ人間だけが悩むのか。迷いの根源は、 頭で考え概念化した『いのち』を問題にし、現実に息づいてい る『いのち』をおるそかにしていることである。 この『いのち』の参究こそが修行の根本である」と話された。この禅話の後には、会場内の全員により、椅子坐禅が行われた。
4月20日(第3日目)

北アメリカ開教センター開所式

 第3日目には、北アメリカ開教75周年、両 大本山北米別院禅宗寺創立75年記念の盛儀に 併せ、「北アメリカ開教センター開所式がロスアンゼルス両大本山北米別院にて、 大竹明彦宗務総長を導師に執り行われた。

 北米各地で布教活動に携わっている開教師、伝道教師の出席のもと、北アメリカにおける曹洞禅の新たな布教展開の拠点としての期待を担い設立された。開教センター所長には、前ミネソタ禅センター主任開教師・奥村正博師、書記には前禅宗寺駐 在開教師・古渓理哉師が就任した。

 海外開教はこれまで開教総監部が中心となって行わ れてきたが、従来の日系人を対象にした時代は既に過 ぎ去ろうとし、三世や四世はもとより、いわゆる日系 以外の人々を対象とする新時代を迎えている。これに 対応し、海外における社会情勢と地域性を把握し、機 動性のある時代即応の宗門体制がとられなければなら ないことは明らかである。そこで開教総監部のもとに 開教センターが設立されたわけである。

 この開教センターはロサンゼルス禅宗寺の敷地内に 事務所を設置し、専従の職員を配置し、常に地域全体 の開教に関する情報の収集、布教資料の研究、開教師、 伝道教師の育成、交流、一般大衆に対する布教の展開 など、まさに開教の本格的活動を行い、曹洞禅の普遍 性を広く世界に示していくことが期待される。 両大本山北米別院禅宗寺開山歴住諷経 永平寺監院・南澤道人老師の導師のもとに厳修された。

創立75周年慶讃法要

 宗務総長・大竹明彦老師の導師のもとに厳修された。 献灯献華中には、禅宗寺婦人会によって三宝御和讃が 英語にて奉詠された。

檀信徒回向万灯供養

 総持寺監院・江川辰三老師の導師のもとに厳修された。禅宗寺本堂の照明を全部暗くした後、檀信徒一人一人の手によって、灯明が捧げられた。

 この法要後、山門にて写真撮影が行われ、続いて、 禅宗寺パーキングにて盛大な祝斎ビュッフェが設けら れた。

 私は今回、この75周年のちょうど2ヶ月前から事務局員という形で、この行持に参加させていただいた。 75周年事務局といっても、常に確保できるマンパワ− は3、4人といったところである。午前8時の朝課、 ミーティングに始まり、深夜まで業務をこなす日々が 続いた。

 この間、もちろん75周年記念諸行事の準備が主な仕 事になるわけであるが、北アメリカ開教総監部の業務、 禅宗寺の寺務・檀務もお手伝いさせていただくことが できた。これにより、檀信徒・坐禅会のメンバーの方 とも直に接することができ、ほんの少しだけでも海外 の寺院を実感することができたと思う。

 お寺とメンバーの結びつきは非常に強いもので、そ れは日本の寺院以上のものがあろう。お寺を訪れる皆 さんが、日本を求めて、日本を感じようとしているこ とを、私は肌で感じた。つまり、それだけに、行持や 法要も非常に多いことになる。月に一度ないしは、そ れ以上のベースで大きな様々な行持が行われているの である。

 また、教団の運営に関しては、理事会において協議 し、決定される。開教師の仕事は、葬儀・法事のよう な宗教儀式の執行と寺務全般が主なものとなる。そし て、赴任してくる開教師が数年経つと日本に帰ってい くことと併せてみると、教団内において開教師は一雇 用者であるという意識が存在、浸透しているように思 われる。

 このような様々な諸事情、そして多くのメンバーを 抱えた寺院の檀務・寺務に加え、そこに開教総監部の 業務が混在しているという現状などを鑑みると、本米 の曹洞禅の海外開教ということも、なかなかままなら ないものがあるのではないかということを実感せざる をえなかった。ただ、もちろんこの点に関しては、他 の海外寺院・禅センター等の御苦労を体験していない ので、一概には言えないとも思える。

 この75周年を機に、開教総監部内に〔北アメリカ開 教センター〕が設立された。実質的には、総監部の業 務を禅宗寺から切り離し独立させることになると思わ れる。このセンターの設立は、これからの海外開教、 そして宗門の将来を見据えたファースト・ステップで あり、来る21世紀へ向けての新たな着実な一歩といえ よう。


北米総監部人事

 開教センター設立に伴い、総監部人事も一新さ れた。永年に亘って総監として北米をとりまとめて きた山下顕光師が勇退し、オークランド好人庵主 任開教師・秋葉玄悟師が総監に任命された。参事 には桑原弘之師、書記に横山泰賢師が就任した。

 また、サンフランシスコ桑港寺主任開教師・細 川正善師は20年の開教生活にピリオドをうち、自坊・福島県猪苗代町・天徳寺 に戻られた。後任には、南原一貴師が就任した。


続・マウイ満徳寺創立90周年記念法要  仏教国際親善ハワイの旅レポート
愛知県地蔵寺副住職 浅 井 宣 亮

 夕食の後、ハワイ大学歴史学センター主任・西本ウォ− レン氏の司会進行で「自分が考えている文化と宗教に ついて」というテーマでパネルディスカッションが行 われた。パネリストとして、ハワイの民俗宗教の祭司 であり、クム・フラというハワイの伝統的な踊りの指 導者であり、警官でもあるディーン・ハーベスト氏、 オアフ島のワヒアワ龍仙寺主任開教師である駒形宗彦 師夫人であり、ハワイの太鼓の指導者でもある駒形フェ イ氏、マウイ・コミュニティー・カレッジ哲学科の先 生であるパトリシア・ライフ氏、ベナージュ・大円師、 松永然道会長が招かれた。

宗教は文化の一側面

 はじめに西本氏が、「自分の受け持っている学生の ほとんどは、歴史が嫌いといいます。それはコロンブ スなどといった名前を暗記するだけの退屈な科目であ ると思っています。しかし、自分の目上の人から話を 聞いたりすることも歴史を学ぶということです。

 そして、“文化とは”“生き方”を意味します。し たがって、文化とはその社会の慣習・伝統・言語・宗 教などから構成されます。つまり、宗教は文化の一側 面となっています。

 現在のハワイの文化は、日本文化・伝統的ハワイ文 化・アメリカ文化などの影響を強く受けています。こ こマウイ島では、マウイの文化の影響も大きいでしょ う。

 また食べ物も文化の一側面を担っているといえます。 このように見た場合、宗教も文化の一側面に過ぎない といえるのではないでしょうか。」と、文化と示教の 関係を述べた。

伝統を次世代へ

 ハ一ベスト氏は、「宗数とは価値判断の基準となる ものである。19世紀初頭、西欧文化がハワイに流入し て、ハワイの伝統的宗教は崩壊してしまった。20世紀 になるとハワイは合衆国の一つの州となり、西欧式教 育も導入された。その結果、子供達はハワイ語を使わ なくなってしまった。

 しかし最近になって、ハワイ固有の文化の価値を再 認識しようとする傾向が見られるようになってきた。 クィーンホスピタルという、ハワイ人であれば無料とい う病院も建設された。文化的価値(宗教)は変容していくが、伝統を次世 代に伝えていくことは重要なことでしょう。」と述べた。

 ハーベスト氏はこの発表の後、筆者のインタビュー に対して、「伝統的ハワイ文化では、雨・風・海・空・ 火は一つであると考え、調和を大切にし、物質ではな く精神性を重視していた。これは伝統的日本文化と類 似していると思う。日本文化には伝統があり、尊敬し ている。 ハワイにおいては、日本文化とハワイ文化と はお互いの本質を維持したまま融合することが可能で はないだろうか。しかしながら、アメリカ文化とハワ イ文化の融合は難しいだろう。」と、文化間の関係に ついて答えている。

文化的価値の変容

 次いで、駒形氏は、自己の半生を語ることにより日 本文化・アメリカ文化・日系寺院の関連を提示した。 「現在の自分の親戚は、どうしてハワイに来たのか、 またかつて日本ではどんな文化を持っていたのかと尋 ねても答えられない人が多い。日本語が全く話せない 人が大部分です。しかし、もち・そばを正月に食べる のは好きです。このようなことは、母などの家族から 教わりました。“ありがとう・もったいない”などと いう価値観は家族で共有することができると思います。

 学生時代の記憶には、お寺に関しては花祭り・日曜 学校・盆踊り・家族の法事などがあります。これら以 外にも、紙細工・合気道などといった日本的なものを 学びました。その一方、バイオリン・ビオラなども学 びオーケストラに所属していました。 人生は新しいことにチャレンジしていくことだと思っ ています。」

 そして西本氏はこの話に対し、「これは、文化は大 きく変容しているということの具体例であろう。」と いうコメントを付け加えた。

禅は宗教・文化を越えたもの

 ライフ氏は、「禅は哲学であり、知恵です。禅は私 の人生をきれいにしてくれます。現在、地球では、環 境破壊が進んでいます。これは他人事ではありません。 我々はこの地球上にいるのです。そして、我々の仏性 も今ここにあるのです。

 ベトナム戦争が起こり、アメリカでは多くのドロッ プアウトが生まれました。彼らは、人の本性とは何か と問うていました。肌の色・言葉・文化・宗教などの 相違にかかわらない、人間の本性とは“仏性”でしょ う。したがって、仏性を説く禅は、文化・宗教を超越 したエッセンスです。」と、禅が宗教・文化を越えた ものであると強調した。

縁を説く重要性

 大円師は、日本語と英語の違いについて指摘した。 「英語では、1(私)から始まり、時間・空間に広がっ ていきます。しかし、日本語では時・場から1が規定 されます。現在、アメリカでは個人主義が強すぎます。 そしてそれがさまざまな問題を生じさせる原因になっ ています。日本的な、縁が私を動かしているという概 念は、現在のアメリカでは非常に有意義なものでしょ う。」

伝統も縁によって変容する

 大円師の発表に続き、松永会長は、「風性常住」つまり風があるから旗が動くのか、旗が動くから風があるのかといった公案を引用し以下のようにまとめた。 「自分・これ・あれなどといった相違は、自分がそれ を認めるからであるのです。すべては、白分たちの心 の中に存在します。そして、他が認識するから自があ ります。つまり、完全に独立した存任というものは存 在しません。

 伝統も同様に独立した存在ではありません。伝統が 変わっていくことを残念に思う人がいますが、伝統も 縁によって変わっているのです。我々を取り巻きサボー トするもの、つまり環境が私たちを作っています。私 達が今ここにいることを、感謝しましょう」

 こうしてシンポジウムは盛況の中終了した。この後 “ハワイ祭り太鼓”の演奏で、我々をもてなしていた だき、非常に楽しく過ごすことができた。

 翌17日は、200名余りの出席者を集めた中で、午前 9時より満徳寺において、開山歴住忌・檀越先亡累代 諷経が松浦玉英ハワイ開教総監の導師のもとで執り行 われた。次いで、大竹明彦宗務総長の導師のもとで、 満徳寺創立90周年記念慶讃法要が執り行われた。

 この後、祝賀昼餐会が開催されたが、ここでも、太 鼓で我々をもてなしていただいた。ロサンゼルス禅宗 寺においても、ハワイ日系寺院においても、太鼓は非 常に盛んである。仏教とは直接関連はないかもしれな いが、子供達とその親、また若者を寺院に親しませる 方策としては非常に成功しているといえるだろう。


SZIだより
シンポジウム:ハワイ布教を考える会

SZI事務局より飯島尚之師パネラーとして参加

 去る2月19日、浄土宗総合研究所主催によるシンポ ジウム「ハワイ布教を考える会」が増上寺において開催 された。浄土宗総合研究所の鷲見定信師による司会進 行の下で、浄土宗・水谷浩志師、曹洞宗よりSZI飯 島尚之師、日蓮宗・木内隆志師、浄土真宗本願寺派・林 安明氏、真如苑・瀬尾勤三師らが講師としてそれぞれの 現状、問題点を発表した。そして休憩の後、浄土宗総 合研究所・武田道生師によるコメント、全体討議が行わ れた。今回のシンポジウムでは、特に浄土真宗と真如苑 のケースは曹洞宗と異なる点が多く参考になった。この 二宗の発表の要旨は、次のようなものである。

 浄土真宗は米国日系移民の中では最も勢力があり安 定している宗派であるが、林師はその要因として、
 1.日本人としてのアイデンティティの付与、
 2.地区単位の布教、
 3.社会奉仕、
 4.仏教教育、
 5.教義の平易化等
をあげた。以下はその具体例である。

(1)メンバーに対して、銀行と提携して本願寺のマーク入 りクレジットカードを発行し、寺院への帰属意識を高 める。そして、買い物に使用した額の1%が銀行より 寺院に支払われるため、寺院の会計にも貢献している。
(2)開教師を寺院ごとではなく地区に派遣し、会計も地区 ごとに行う。これにより、開教師の数を少なくできメ ンバーの経済的負担を減少できる。また、地区で建立 した寺院がメンバーの平均年齢が40代という活力のあ る寺院になっているという例もある。
(3)欧米ではキリスト教の影響により宗教は社会奉仕する ものという意識が強い。ホノルルの寺院では“ジョン ソン&ジョンソン”の基金の援助を得て、プロジェク ト・ダーナという老人介護の活動を行っている。
(4)アメリカの神学校と提携している米国仏教大学院(I BS)があり、僧侶資格と共に修士号も与えることが 出来る。(この後、日本で得度)
(5)アメリカでは漠然とした言葉で“なんとなくわかる” という教えは受け入れられ難く、教義の平易化・英訳 が求められる。真宗では20年計画で親鸞の著作を全巻 翻訳するという事業を進めてきて、1997年6月に修了 する予定である。今年からは、他の祖師の著作の翻訳 が20年計画で始まる。このような活動を通じて、現在、 布教のためのテキストは豊富である。

 真如苑の場合、新宗教では一般的な在家布教のス タイルを採用している。つまり、布教師が布教するの ではなく在家信者が布教活動を行い、布教師は信者 の教化力をつけるために派遣される。そして、その任 期は半年である。これは、派遣されることが布教師に 対して多大な制約とならない、個人のカラーが強くな ることを防ぐ、日本との関係を密にするなどの意味も 持つ。

 このように、布教師の任期を短くした場合、布 教師の英語力が問題となり易い。しかし、真如苑では 通訳を使うことによりこれに対処している。また、修 行は日本と同じ日時に同様の形態で修される。つまり、 法話は通訳を介して日本語で行われ、読経も日本語 で行われる。そして法要は、立川にある本部のビデオ を上映しながら遂行される。このようなスタイルは日 系人に日本人という意識を持たせるには有効だろう。

 このシンポジウムのように、他宗派の海外布教の現状 に触れる機会を持つことは、海外布教の未来像を探って いく上で非常に有意義であった。今後も、他宗との交流 を密にしたいきたい。
(レポーター・浅井亘亮)


「アメリ力における女性の禅指導者を支援する会」発足の趣旨と協力のお願い =ベナージュ大圓師を中心に=
青山俊董

 バレリーナとしての道を歩んでいたべナージュ大圓師 は、少女時代より日本の文化や禅に深い関心を寄せ、長い 準備期間を経て、遂に縁が熟し、昭和54年3月に出家得度 し、以来8年間、名古屋の愛知専門尼僧堂で修行されました。

 特別尼僧堂、師家養成所も修了された師は、数年 前アメリカへ帰られ、懸命の努力をしておられます。 無量寺にも何度も足を運んでいただきました。

 今秋10月後半の半月間を、ベンシルバニア州の大圓 師の道場を始め、ニューヨークの禅コミュニティ、マ サチューセッツ州のハーバード大学、サンフランシス コ、ロサンゼルス等々、約十会場で坐禅と講演をする べく招請を受け、訪米の旅に出る予定です。

 現在の日本の私共が1500年にわたって仏教の恩恵に 浴することができている背景には、玄奘三蔵法師や達 磨大師を始め、多くの先達方が、命をかけてインドか ら中国へ仏法を伝え、更に鑑真和上・弘法大師・道元 禅師等、数えきれない方々の捨身の願行によって、中 国から日本へと仏法をお伝えいただいた御苦労がある のです。

 その洪恩を思うとき、今、日本より欧米へ仏 法をお伝えするお役目をうけたまわることができる光 栄‐と責任の重大さを思い、又彼の地で懸命の努力をし ていて下さる開教師の方々への、少しでもお手伝いが できればと思い、この度「アメリカにおける禅指導者 を支援する会」を発足させました。

 同時に彼の地の道場への基金の一部 にもなることを念願し、6月1日に催す恒例の野良着 茶会において、私の貧しい墨蹟の頒布会も計画致しま した。御理解ある御協力をお願い申し上げます。合掌

支援する会への支援金は下記にお願い申し上げます。
郵便振込 00870-9-17864
愛知専門尼僧堂
通信蘭に(アメリカにおける禅の指導者を支援する会)明記
1口 10,000円

問い合わせ先 名古屋市千種区城山町1ー80
愛知専門尼僧堂
Tel 052-751-2671


マウントエクティー禅堂(平等山禅堂)

 マウント・エクィティ禅堂は、ベナージュ大円師が1991年に日本から帰国し、母親の世話をしながら、坐禅修行を始 めた時に生まれた。マウント・エクィティ禅堂は1809年にク ェ−カー教徒の女性によって建てられた、古い石作りの建 造物である。彼女はそれを「聖者の安息所」と名付けた。

 この建物はマウント・エクィティと呼ばれるちいさな丘の上 にあり、ちいさな森と中央ペンシルバニア北部の村のトウモ ロコシと大豆の畑に囲まれている。この建物は今、9つの部 屋にわかれており、最初に坐禅をしたのは創設者の母親の 居間であった。もうひとつの部屋が使えるようになり、これ がマウント・エクィティ禅堂となって、6人の修行者が週末 接心やその他のリトリートのために宿泊できるようになった。

 大都市地域や大円師を指導に招いたクエーカー教センター から、口コミで人が来るようになった。長年の間により多 くの部屋が使用可能になっていったので、禅堂の他にも、 女性用宿泊部屋、男性用宿泊部屋、来堂した指導者のた めの特別宿泊部屋ができ、いまでは20人が宿泊できるよう になった。

 受戒をしたいと頼みにくる修行者の数が増え続けている。 彼らのなかには、大都市地域から来る真摯な修行者達や、 大円師の母親(楽円)や刑務所内の長期修行者数名が含 まれている。

 マウント・エクィティ禅堂の目標は二つある。一つは、遠 方に住んで、修行にまじめに取り組み、それぞれ異なる個 人的事情を持つ大半の修行者達に対し、道元禅師の教え に従った真剣で確かな禅修行をする機会を与えることであ る。もう一つは坐禅とカウンセリングを通して、心の平安 を求めている地域の人達が「目覚めた道」に接することが できるような方法を見出すことである。たとえば、椅子坐 禅を行じているお年寄達、近郊の6か所の刑務所に投獄さ れている囚人達、ストレスの多い状況下にある、あるいは 飛行機事故で友人を欠ったショックから回復中の十代始め の若者達、地域の諸大学の学生達、多くの民族的、文化的背景を持つ者 達、慢性あるいは危篤な健康上の問題をかかえた人たちである。

 お互いのグループが相互に助け合って成長を遂げることを理想と考えている。  将来的にはキーストン州(ペンシルバニア州)、そしてその外の多くの人々に 「目覚めた道」を提供する可能性を書拡大できるよう、マウント・エクィティ全部を購入できたらと考えている。   


総会報告

 去る2月20日(木)午後1時より、1997年度SZI 総会が、東京グランドホテル三階「菊」の間において 開催された。

 この総会に先じて、松永然道会長導師により、海外 開教師示寂者追悼会が厳修された。引き続き、副会長・ 藤川享胤師の開会の辞、会長の挨拶、そして、来賓と して、教化部長・佐藤良彦老師の挨拶を賜った。そし て、峰岸正典師が議長に選出され、議案が討議された。

 事務局より1996年度の事業報告、会計報告、会計監 査報告がなされ、満場一致で承認された。次に規約改 正案 1.役員に事務局次長を追加 2.役員の任期二年 3.評議委員会を設置の三件が提出され満場一致で承認 された。そして役員改選に当たり、新役員案が満場一 致で承認された。新役員は下記の通り。

新役員                             

会長    松永然道(静岡県清水市・宗徳院住職)
副会長   藤川享胤(山形県鶴岡市・般若寺住職)
副会長   采川道昭(山形県東田川郡・宝泉寺住職)
事務局長  福島伸悦(埼玉県行田市・興徳寺住職)
事務局次長 飯島尚之(東点都中野区・宗清寺副住職)
会計    西沢応人(東京都豊島区・祥雲寺住職)
事務局   長田敬道(静岡県静岡市・洗耳寺住職)
      黒柳博仁(長野県長野市・天周院副住職)
      大谷有為(東京都新宿区・長泰寺副住職)
      浅井宣亮(愛知県大府市・地蔵寺副住職)
      亀野哲也(神奈川県横浜市・貞昌院副住職)
監事    加藤孝正(静岡県富士市・永明寺住職)
      滝澤和夫(東京都新宿区・東長寺住職)
 引き続き、1997年度事業計画案、会計予算案が事務 局から提出され、満場一致で承認された。その後、質 疑応答に移り、横浜善光寺留学育英会理事長・黒田武 志師よりご自身の体験を通して「SZIへの期待と責 任が増してきていますが、もっと開教師支援基金を増 やす方法を考え、実質的な支援活動をしていただきた い」との意見が出された。午後2時30分、滞りなく総 会は閉会となった。

 この後、創立5周年を記念して「情報化時代におけ る仏教の新たな可能性」と題し、武田道生先(大正 大学、東洋大学、早稲田大学非常勤講師)をお迎えし、 記念講演会が行われた。(この記念講演録は、小冊子 にまとめます。)

 この後、同会場にて、懇親会が行われた。懇親会に は、大竹明彦宗務総長はじめ、佐藤良彦教化部長、山 本健善国際課長、善波俊典師らが出席して下さり、海 外布教に関しての情報交換なども行われ、有意義なひ とときであった。又、昨年SZI主催で行ったハワイ・ マウイ満徳寺90周年参拝ツアーに参加した方々も出席 され、写真交換やら楽しかった思いで話に花を咲かせた。


寄付ご協力の御礼

謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

 この度は、曹洞宗北米別院禅宗寺・創立75周年記念事業・本堂改築寄付にご協力頂きまして誠に有難うございました。皆様のおかげをもちまして、身障者やお年寄りの方々の為の寺院内施設設備も無事完成致しました。

 また、4月18日から20日までの間、修行されました曹洞宗北アメリカ開教75周年、禅宗寺創立75周年記念大法要も総持寺副貫首板橋興宗老師、宗務総長大竹明彦老師、大本山永平寺監院南澤道人老師、 大本山総持寺監院江川辰三老師、ハワイ、ブラジル、日本から総勢100名以上の随喜をお迎えして、盛大かつ厳粛に法要が修行され、無事円成致しました。重ねて皆様からのご支援を感謝申し上げます。

 尚、ご芳名は本堂内寄付単に彫記させて頂き、詳細はSZI(曹洞禅インターナショナル)の会報を通し、皆様へご報告させて頂きます。これからも海外寺院へのご理解、ご支援を宜しくお願い申し上げます。

 ロスアンゼルスへお越しの際は、ぜひ禅宗寺にお立ち寄りください。

 まずは、略儀ながら書面にて御礼申し上げます。 北米両大本山別院禅宗寺 山 下 顕 光 九拝


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